Agents API公開ベータ|Codexを組み込む3つの実行環境
代表取締役 上坂大地郎

自分のアプリから、Codexと同じ実行管理の仕組みを使ってエージェントを動かせるようになりました。OpenAIが2026年9月10日に公開したAgents APIは、モデル呼び出し、ツールの利用、作業の継続をまとめて扱う公開ベータです。 新しいAIモデルの発表ではなく、アプリに組み込むための入口が増えたと捉えると理解しやすくなります。公式発表。
開発を始める前に押さえたい点は次の3つです。
- 実行環境は3方式。 ファイルやコード実行が必要か、自分の設備を使うかで選びます。
- Agents API自体の追加利用料はありませんが、実行は無料ではありません。 モデル、ツール、OpenAIが用意するコンテナの費用を分けて確認します。
- 完了通知と成果物の正しさは別に確認します。 自前の実行環境を選んでも、データ保持に関する条件は残ります。
エージェントを業務アプリや開発支援ツールに組み込む人に向けて、今回の変更と試作時の判断材料を整理します。読み終えたら、既存のAgents SDKとの使い分け、試す環境、動作確認の合格条件を決められます。仕様の確認日は2026年9月13日。以下の例は公式資料に沿った試作案で、APIの実行結果や速度を独自に測ったものではありません。
Codexの実行管理が、アプリから呼べるようになった
会話を続けながら、ツールを使う処理を任せる
Agents APIでは、OpenAIが管理するCodex harnessを使います。harnessは、モデルが次の行動を決め、ツールを呼び、その結果を受けてまた考える処理を支える仕組みです。モデルを作業担当者にたとえるなら、harnessは作業記録を保ちながら必要な道具を渡す進行役に近いものです。
開発者は依頼内容、モデル、利用するツールなどを指定します。セッションの管理や文脈の圧縮、エージェント間の調整はOpenAI側が担います。 ただし、自分のサービスに何を接続し、どこまで操作させるかはアプリの設計として残ります。Agents APIの概要。
たとえば、調査結果を受け取った後に「比較対象を追加して」と依頼する場合、同じセッションを使って仕事を続けられます。セッションは会話と作業を保持する単位で、その中の一回分の仕事をturnと呼びます。モデルへ文章を送って回答だけを受け取る処理よりも、途中経過を持つ仕事を組み込みやすい設計です。セッションとturn。
公開ベータと、個々の利用条件を区別する
公式発表は全開発者向けのpublic betaとしています。安定版としての一般提供を宣言したものではなく、ベータ期間中に改善を続ける方針です。特定モデルへのアクセスやAPIプロジェクトの権限まで、無条件に付与されるという意味でもありません。
OpenAI Developersの公式投稿でも、クラウドエージェントの構築と実行、長時間のセッション、文脈管理を提供範囲として挙げています。発表の概要を確認する入口として使えます。
Agents SDKを使っている人は、実行の担当を比べる
似た名前のAgents SDKは、アプリ内でエージェントの処理を組むためのライブラリです。今回のAgents APIと同一のものではありません。どちらが新しいかより、エージェントの実行管理をどこに置くかで比べると選びやすくなります。公式の実行方式比較。
選択肢 | 主に扱うもの | 開発者が考える分担 |
|---|---|---|
Agents API | OpenAIが管理するCodex harnessと継続セッション | アプリとの接続、ツール、実行環境、成果物の検査 |
Agents SDK | アプリ内で動くrunnerとツール・引き継ぎ | 配置先、保存、承認、アプリ固有の処理 |
Responses API | モデルの応答とツール利用の統合 | 呼び出し方や状態管理を、必要な範囲で組む |
これは性能順位の表ではありません。決まった入力を分類するだけの処理と、資料を集めて何度も修正する処理では、必要な仕組みが違います。短い処理が既に安定して動いているなら、移行する理由を先に確かめてください。
一方、ツールの戻り値を受けて処理を続ける部分や、作業の途中経過を保存する部分の実装が増えているなら、Agents APIで任せられる範囲を検討できます。これは公式の分担を踏まえた選び方であり、移行すれば開発費や実行費が下がるという実測結果ではありません。
接続先の社内システムを呼ぶfunction toolは、アプリ側が呼び出しを受け、関数を実行し、結果を返します。既存の業務APIが自動で統合されるわけではありません。 ツールの入力形式、エラーの返し方、許可する操作を揃える作業は残ります。アプリサーバーの役割。
実行環境は「なし・OpenAI管理・自前」の3方式
ファイル操作が必要かを先に決める
公式資料のenvironmentは、コードを実行したり、ファイルを扱ったりする作業場所です。質問への回答や外部ツールの利用だけなら、その場所を設けない構成も選べます。
environment.type | 用途の目安 | 残る条件 |
|---|---|---|
| 会話、remote MCP、アプリが処理するfunction | 組み込みBashや作業用ファイルは使えない |
| スクリプト実行、ファイル編集、成果物作成 | パッケージ、入力ファイル、ネットワークを設定する |
| 独自ソフト、プライベートネットワーク、自分の計算環境 | 起動、再接続、停止、必要なファイルの保全を管理する |
出典: 公式アーキテクチャ。自前を選んだ場合も、harnessまで自分の環境に移るわけではありません。
各方式の違いは、作業場所と管理担当の対応で整理できます。

必要なファイルと接続先から環境を選ぶと、引き受ける運用も見えてきます。自前の環境では、作業途中の再接続や終了後の片付けも設計に含めます。
分業は、切り離せる仕事に使う
Agents APIはサブエージェントへの分担も扱います。各サブエージェントは独立した文脈を持ち、主エージェントが結果をまとめます。公式資料は、別々の文書のレビューや、障害原因を分けて調べる作業を例に挙げています。マルチエージェント。
前の結果がないと次へ進めない手順を無理に並列化しても、その依存関係は消えません。同じファイルを複数の担当が編集する場合には調整も必要です。最初の試作では一つの仕事を最後まで通し、切り離せる部分が見えてから分業を増やすと、失敗箇所を追いやすくなります。
「追加料金なし」の外側にある実行費用
モデル・ツール・作業場所を別々に見る
料金は、選んだモデルのAPI単価、利用したツール、OpenAI管理のサンドボックスを使う場合のコンテナ料金で構成されます。Agents APIそのものの追加利用料がないことと、タスクの総額がゼロになることは別です。料金の説明、公式料金表。
モデルの費用は、一度の質問と最終回答だけで見積もると不足する場合があります。途中のモデル呼び出しやサブエージェントの利用も確認対象です。公式の観測機能では、主エージェントとサブエージェントのturnごとに記録されたトークン利用を追えます。使用量の確認。
想定シナリオ: GPT-6 AstraのStandard・短コンテキストで、キャッシュを使わない入力10,000トークンと出力2,000トークンだけが課金されたとします。公式単価は100万トークンあたり入力10ドル、出力50ドルなので、モデル代は0.10+0.10=0.20ドルです。
これは計算例であり、1タスクの定額ではありません。長コンテキスト、キャッシュ、Fast modeなどの条件が変われば別の単価を使います。ツールやコンテナも含めた総額は、実際の利用条件と記録で確かめてください。
採用できた成果物までを比較する
試作では「一回呼ぶといくらか」に加え、手直しを含めて成果物を採用するまでの費用を記録するのを勧めます。安い呼び出しでも、同じ依頼を繰り返すなら仕事単位の費用は増えます。逆に長く動く処理でも、人が直す範囲を減らせるなら評価は変わります。
比較する入力、求める出力、合格条件を揃えることが先です。費用の記録を後から追加する場合は、AIエージェントの監視ツール比較も参考になります。Agents API公開ベータではトレースのAPI取得や外部exporterが対象外とされているため、既存ツールへそのまま接続できるとは考えず、まず公式ダッシュボードで確認します。
初回は、小さな集計ファイルを作らせる
外部接続を使わない試作に絞る
想定シナリオ: アプリから渡した数値だけを合計し、結果をJSONファイルに保存する試作です。公式のhosted sandbox例をもとに、入力を10・20・30、期待する合計を60に固定します。自分の顧客データや既存システムへの接続は不要です。公式の集計例。
APIプロジェクトでapplication API keyを用意し、api.agents.read、api.agents.write、api.responses.writeを付与します。キーはアプリを動かす端末の環境変数に置き、エージェントのサンドボックスへ渡さないでください。公式SDKはベータ用のヘッダーを自動で付けます。開始前の条件。
次は公式リクエスト形式に沿ったPythonの試作例です。API実行は未検証で、失敗処理まで備えた本番用コードではありません。
import base64
from openai import OpenAI
csv_data = base64.b64encode(b"amount\n10\n20\n30\n").decode()
with OpenAI() as client:
with client.beta.agents.sessions.create(
agent={"model": "gpt-6-astra"},
environment={
"type": "openai_hosted",
"network": {"access": "disabled"},
"files": [{
"type": "inline",
"path": "/workspace/amounts.csv",
"data": csv_data,
}],
},
input=(
"/workspace/amounts.csvをPythonで読み、amount列を合計してください。"
"結果を/workspace/outputs/summary.jsonへ、"
"totalというキーを持つJSONで保存してください。"
"実行結果を報告し、失敗した場合は成功したと書かないでください。"
),
stream=True,
) as events:
for event in events:
print(event.to_json(indent=None), flush=True)
pip install --upgrade openaiでAgents APIのベータ機能を含むSDKを用意し、キーを設定した端末から実行します。network.accessは明示的に無効化しています。hosted環境の既定は、テンプレートから制限を継承する場合を除いて外向き通信が有効なので、ローカル集計に通信が要らないことを設定にも反映します。
返答、ファイル、実行状態を突き合わせる
セッション作成の応答は、環境の準備が始まったことを示します。準備完了と同じではありません。接続状態や失敗イベントを確認し、作業が終わったら/workspace/outputsの成果物を取り出して中身を見ます。
確認するもの | この試作の合格条件 |
|---|---|
入力 | amount列が10・20・30の3行 |
成果物 | JSONを読み取れ、totalの値が60 |
実行状態 | turnの完了を確認し、失敗したツールが残っていない |
後片付け | 必要な出力を保存し、使い終えたセッションの削除を確認 |
この表は検証計画です。コードが表示した文章に「保存しました」とあっても、ファイルの存在と内容を確かめるまでは合格にしません。実運用へ進むなら、入力欠損や文字列の混入時にどう返すかも追加で試してください。
停止・成功・データ保持は、別の条件として残る
ストリームを閉じても、処理の取消にはならない
公式資料は、イベントの受信を止めることと、タスクをキャンセルすることを区別しています。処理を止めたい場合は取消を要求し、その結果を確認する必要があります。セッションのidleだけでも成功とは判定できません。セッションの結果と取消。
agent.session.turn.completedはturnの完了を示しますが、全ツールの成功を保証するものではありません。失敗、取消、成果物の不足をアプリ側で分けて表示すると、利用者が途中結果を完成品と取り違えにくくなります。

画面の動きが止まった理由を、通信・処理結果・成果物に分けて確認します。再実行する前に、前の処理が残っていないかを見てください。
自前の計算環境でも、保持条件は変わらない
Agents APIは、確認時点でZero Data Retentionに対応していません。 Zero Data Retentionはデータ保持を行わないための提供条件です。公式概要では、self_hostedを選んでも対象にはならず、データレジデンシーの対応は米国のみと明記されています。データ保持の条件。
したがって、「実行するコンピューターが社内にあるから、会話や状態も社内だけに置かれる」とは判断できません。接続前に、扱うデータの条件とAPIの保持仕様を照合してください。
hostedの作業ファイルも永久保存ではありません。活動とkeep-aliveが一時間途絶えるとサンドボックスが削除される場合があります。必要な出力を保存してから、使い終えたセッションを削除する流れにします。後片付けを含む停止・再開の整理には、AIエージェント障害対応ランブックも使えます。
移行を決める前に、任せる仕事を一つ選ぶ
最初に選ぶのはモデル名だけではありません。入力、必要なツール、ファイルを扱う場所、成果物の合格条件までを一組にしてください。上の集計なら、正解が60だと分かるため、返答と実ファイルを照合できます。
その試作で、実行状態を追えて、費用を確認でき、終わった資源を片付けられるかを確かめます。次に、既存の処理と同じ入力で比べ、開発者が保守する部分が減るかを見ます。Agents APIを採用する理由は、その比較結果から決められます。
参考・出典
すべて参照日: 2026-09-13。公式仕様と提供元の説明を参照し、コードは未実行の試作例として掲載しています。
- OpenAI「Introducing the Agents API」(2026-09-10): https://openai.com/index/introducing-the-agents-api/
- OpenAI Developers公式X投稿: https://x.com/OpenAIDevs/status/2098130570048045453
- Agents API overview(料金・保持条件): https://developers.openai.com/api/docs/guides/agents-api/overview
- Agents(API・SDK・Responses比較): https://developers.openai.com/api/docs/guides/agents
- Architecture(環境とアプリの分担): https://developers.openai.com/api/docs/guides/agents-api/architecture
- Multi-agent: https://developers.openai.com/api/docs/guides/agents-api/multi-agent
- Pricing: https://developers.openai.com/api/docs/pricing
- Agents API quickstart: https://developers.openai.com/api/docs/guides/agents-api/quickstart
- OpenAI-hosted sandboxes(集計例・ネットワーク・保持期間): https://developers.openai.com/api/docs/guides/agents-api/environments/openai-hosted
- Run and continue sessions(完了・失敗・取消): https://developers.openai.com/api/docs/guides/agents-api/sessions
- Observability and usage: https://developers.openai.com/api/docs/guides/agents-api/observability
- Sandbox security: https://developers.openai.com/api/docs/guides/agents-api/environments/security



